噛むcome歯科情報内の情報を検索する場合はこちらの検索をご使用ください。
携帯サイトをご覧いただくには、左記のQRコードをご覧下さい。
携帯サイトをご覧いただくには、左記のQRコードをご覧下さい。
口腔癌(こうくうがん)は、舌癌(ぜつがん)、歯肉癌(しにくがん)、口腔底癌(こうくうていがん)、頬粘膜癌(きょうねんまくがん)、口唇癌(こうしんがん)、口蓋粘膜癌(こうがいねんまくがん)、唾液腺癌(だえきせんがん)などの、口腔内にできる癌の総称です。
口腔癌は、初期症状のうちに発見できれば、5年生存率が90%を超え、完治する可能性が高いのですが、進行してしまえば命にかかわるだけでなく、たとえ命を取り留めても食事や会話など口腔内に重い障害が残る可能性があります。
口腔癌の患者数は南アジア諸国がとても多く、噛みタバコの習慣が口腔癌増加の原因と考えられています。
国内では、口腔癌の大部分が舌癌で、口腔底癌・歯肉癌も見られます。
口腔癌の発生頻度は、癌全体の約1〜3%と少ないのですが、舌や歯肉など目に見える部分にできるので初期症状を発見しやすいものの、症状の似た口腔内の他の疾患と間違うなどして、口腔癌を疑われず進行するまで放置されてしまうことも多く、近年では口腔癌での死亡例が増えてます。
(口腔癌の多い南アジアでは、癌全体の約30%が口腔癌です)
舌癌(ぜつがん)は、国内で最も発生率が高い舌に発生する口腔癌で、他の口腔癌と違い20代前後の若い人にも発生するのが特徴ですが、他の口腔癌と同様に40歳以上から発生率が高くなります。
舌癌の主な原因は、歯の詰め物や入れ歯の尖った部分が舌に当たるなど舌への慢性的な刺激で、症例写真の画像のように、主に歯の当たりやすい舌の側縁部や舌の裏側に発生します。
喫煙やアルコールも舌癌(口腔癌全般)の原因の一つと言われています。
舌癌 |
舌癌 舌癌の初期症状(舌の腫れと変色) |
舌癌の初期症状としては痛みは無く、紅板症(赤く変色)や、白板症(白く変色)が見られるほか、硬いしこりができます。
鏡で舌をよく見たり触ってみることで、自分でも発見しやすいですが、白斑症や口内炎などの他の病気と見分けにくいので、口腔癌を疑わず歯科医院の受診が遅れて、発見したときには進行してしまっているということも少なくありません。
実際に舌を触ってみて、明らかに硬くしこりになっているようであれば、舌癌の可能性があります。
特に舌癌は早い段階からからリンパ節への転移が発生するため、舌だけでなく顎の下や首にまで癌が広がる可能性がありますので注意が必要です。
現在では各地域の歯科医師会などで無料口腔癌健診を行っている所もありますので、口腔癌の初期症状が疑われる場合は、楽観視せずに早めに歯科医師の診断を受けることをお勧めします。
歯肉癌(しにくがん)は、歯肉にできる口腔癌で、主に下顎の臼歯部の歯肉に発生します。
歯肉癌は舌癌と違って若い人の発生は少なく、他の口腔癌と同様に40歳くらいから発生が見られ高齢者になるほど発生率が高くなります。
舌癌と比較すれば少ないですが、日本国内で二番目に多く発生している口腔癌が歯肉癌です。
舌癌と同じく、喫煙やアルコール、歯の詰め物や入れ歯などによる慢性的な歯肉への刺激、口腔内の不衛生などが主な原因と考えられています。
歯肉癌 |
歯肉癌 |
歯肉癌の初期症状 |
歯肉癌の初期症状は、歯がある場合は歯のグラグラしてきたり、抜けてしまうなどがありますが、目立った外見的特長が少なく、見つけにくい部分で進行することも多いので、舌癌と比べると更に発見しにくい場合があります。 そのため、歯肉癌を発見したときには進行してしまっているということも少なくありません。
歯肉癌の初期症状(入れ歯が合わなくなった) |
歯肉癌の初期症状(歯がグラグラする) |
口腔底癌(こうくうていがん)は、症例写真の画像のように下顎の歯肉と舌の間の、口腔底部に発生する口腔癌で、口底癌(こうていがん)とも呼ばれ、主に舌下小丘部付近に発生します。
口腔底癌の初期症状は、口腔底部の白斑やしこりで、舌の運動障害や唾液の分泌障害を生じることもあります。
口腔底癌 |
口腔底癌の患者数は多くはありませんが、舌癌と並び比較的初期の時期からリンパ節への転移が発生しやすく、口腔癌を疑って医師の診断を受ける段階で、すでに半数近くがリンパ節へ転移しているという報告もあります。
頬粘膜癌(きょうねんまくがん)は、症例写真の画像のように上下口唇や頬の粘膜に発生する口腔癌で、慢性的な刺激を受けやすい臼歯部の咬合面部分の頬粘膜や、口角のすぐ後方の頬粘膜に発生することが多い口腔癌です。 主に50歳以上に発生し、高齢になるほど発生率が上昇します。
頬粘膜癌 |
頬粘膜癌の初期症状(しこりと腫れ) |
頬粘膜癌の初期症状は白板症や発赤、頬粘膜の腫れと痛みで、粘膜の表面に潰瘍ができます。 開口部に近いため進行すると開口障害が発生する場合があります。
日本ではあまり発生していない口腔癌です。
口蓋粘膜癌(こうがいねんまくがん)は、症例写真の画像のように口蓋(お口の中の天井の部分)に発生する口腔癌で、口蓋粘膜由来の扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)と、小唾液腺由来の腺癌(せんがん)に分類されます。
口蓋粘膜癌 |
口蓋粘膜癌の初期症状(出血) |
初期症状としては、扁平上皮癌は表面に肉芽や潰瘍が発生するので、比較的初期症状のうちに発見しやすいですが、唾液腺由来の腺癌は、内部に発生するため目に見える初期症状がないことが多く、口蓋隆起や多形性腺腫などの他の病気の症状と見分けが付きにくいために、発見が遅れる場合があります。
口蓋癌も日本ではあまり発生していない口腔癌です。
口腔癌の原因は、破損したり適合の悪い詰め物や入れ歯による舌や歯肉への慢性的な刺激や、口腔内の不衛生です。 そして口腔癌の最大の原因はタバコとアルコールで、特にタバコとアルコールの同時摂取は、発癌性物質を口腔内に吸収しやすくするため口腔癌の危険性が高いと言われています。
口腔癌はお口の中にできるので、タバコに含まれるニコチンやタールなどの発癌性物質の影響が特に顕著です。
また、周囲の人が吸っているタバコの副流煙には、主流煙よりも多くの発癌性物質が含まれており、口腔癌の大きな原因となっているので、タバコを吸わない人も注意が必要です。
破損したり適合の悪い詰め物や入れ歯のある人は、舌や歯肉への慢性的な刺激の原因となりますので、ただ口内炎のように見えても、長期的に治らない場合は口腔癌の可能性があるので注意が必要です。
口腔癌は、生活環境を改善し、お口の中の環境を管理することで予防効果が期待できます。
普段の生活の中にも、口腔癌の予防につながることがたくさんあります。
@ 定期的に歯科検診を受け、口腔内の状態を整える。
A 破損したり適合の悪い詰め物や入れ歯は早めに修復する。
B タバコを吸わない。
C アルコールを控える。(特にアルコール度数の高いもの)
D 新鮮な緑黄色野菜・果物を毎日5種類以上摂取する。
E 口腔内をを常に清潔に保ち、虫歯や歯周病を予防する。
特にかかりつけの歯科医院で定期的な歯科検診を受けることは、適合の悪い詰め物やかぶせ物・入れ歯などを事前に発見して修復・調整したり、口腔内を清潔にすることで口腔癌の予防効果が期待できるだけでなく、もし口腔癌になってしまったとしても、初期症状のうちに発見することができます。
口腔癌は進行してしまうと恐ろしい病気ですが、初期症状の段階で発見できれば完治できる可能性が高いので、常に口腔内をチェックすることが大切です。
前癌病変と言われる癌の一歩手前の症状にも注意しましょう。
舌癌の前癌病変(舌が赤く変色) |
歯肉癌の前癌病変(白く変色) |
症例写真は、(財)がん研究振興財団「がんとどう向き合うか 口腔がん」より転載